コラム

出典:JETRO「PPWR概要」資料をもとに編集部で整理

なぜ今、PPWRが注目されているのか

EUでは、包装廃棄物を大幅に削減し、循環型経済への移行を加速させるための新規則「Packaging and Packaging Waste Regulation(PPWR、Regulation (EU) 2025/40)」が2025年2月11日に施行されました。従来の「包装・包装廃棄物指令(94/62/EC)」に代わるもので、EU加盟国ごとにバラバラだったルールを「規則」として一本化し、EU域内で流通するほぼすべての包装(一次・二次・三次包装、サービス包装を含む)に直接適用される点が最大の特徴です。

とりわけ、食品・飲料、飼料、医薬品・医療機器に触れる包装には、より厳格な要件が課されます。日本からEUへ製品を輸出している、あるいは現地に拠点を持つ企業にとっても無関係ではいられない規則です。

適用は「段階的」に進む

PPWRの特徴は、要件ごとに適用開始日がずれている点です。主なスケジュールは次の通りです。

PPWR 主要規制の適用スケジュール
適用開始時期主な義務
2026年8月12日有害物質規制(鉛・カドミウム・水銀・六価クロムの合計濃度100mg/kg以下、食品接触包装のPFAS規制など)
2030年1月1日リサイクルを前提とした設計(リサイクル性能等級C以上)、プラスチック包装の最低リサイクル材含有率
2035年1月1日大規模リサイクルの実現(EU全体で年間廃棄量の55%以上をリサイクル可能なプロセスに対応)
2038年1月1日リサイクル性能等級がB以上に引き上げ
2040年リサイクル材含有率のさらなる引き上げ

医薬品に直接接触する包装や、乳幼児向け食品の包装、既に堆肥化可能と認められた包装など、一部には適用免除も設けられています。

企業に求められる主な対応

  1. 有害物質の管理 — 重金属・PFASの含有量を測定し、規定値以下であることを確認する。
  2. EU適合宣言書(Declaration of Conformity, DoC)の作成・保管 — 包装ごとに適合性評価を行い、文書化する。
  3. リサイクル性能等級への対応 — 「マテリアルリサイクル可能な設計」であることを、重量ベースでA(95%以上)・B(80%以上)・C(70%以上)の等級で評価。
  4. 拡大生産者責任(EPR)への登録 — 加盟国のEPR制度に事業者として登録する義務。
  5. ラベリング・情報提供義務 — 包装の分別・リサイクル方法などを消費者に分かりやすく示す。

不適合の場合、税関での輸入差止めや没収・廃棄の対象となるおそれがあり、2027年2月12日以降は加盟国レベルでの罰則対象にもなり得ます。

実務上の悩みどころ

規則は施行されたものの、詳細を定める委任立法・実施法令の多くはまだ順次公表される段階にあります。ジェトロの現地ヒアリングでは、欧州企業自身も細部が固まらないまま対応準備を進めている実態が報告されており、例えば「包装に使うインキを算入するとPFAS基準を必ず超えてしまう」といった、算入範囲の解釈をめぐる悩みも聞かれます。日本企業としては、リスクベースでの試験計画(意図的添加の有無、材料、食品接触条件、供給元などを踏まえた優先順位付け)を組み、技術的な根拠を残しながら対応を進める姿勢が実務的といえるでしょう。

まとめ

PPWRは、単なる包装の規制強化ではなく、EUが目指す循環経済への転換を包装という切り口から具体化したものです。2026年8月という直近の節目(有害物質規制)だけでなく、2030年・2035年・2038年・2040年と続く長期スケジュールを見据えた準備が必要になります。サプライチェーン全体で包装材メーカーとの連携を強め、早い段階から情報収集と適合性評価の体制を整えることが、EU市場でのビジネス継続の鍵となりそうです。

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