異物・付着物の分析

調査・解析業務

異物・付着物の分析

製品に異物の混入や付着物のトラブルが発生した場合、それが何であるかの調査を行ないます。
異物の分析を行う場合、試料の観察が重要となるため、サンプルの状態を肉眼で⇒拡大鏡で(~3倍)⇒顕微鏡で(~1000倍)⇒電子顕微鏡(汎用SEM)で(~20000倍)程度と観察を行います。
但し電子顕微鏡での観察には試料に導電性を持たせる必要があり、有機物などはカーボンや金、白金などでコーティングする必要があります。
これはサンプルの状態を変質(又は破壊)させることにつながるため、試料量が微量しかない場合には安易に電子顕微鏡による測定を行うことは出来ず、その他の分析を優先させる場合があります。

観察と元素分析

元素分析は試料に含まれる元素は何か?という情報を得ることが出来るので、異物分析においては主に無機系の異物の分析に利用されます。
例えばSEM/EDXや蛍光X線分析装置で元素分析を行うと、その試料が何で出来ているかを推定することが出来ます。

SUS304SEM像1000倍 中心のホールは0.02mmφ
EDXによる元素分析のチャート
SUS304の規格値とEDXによる測定値
(単位:%)
材料記号 C Si Mn P S Ni Cr Fe
SUS304
規格値
C0.08以下 Si1.00以下 Mn2.00以下 P0.045以下 S0.030以下 Ni8.00~
10.50
Cr18.00~
20.00
Fe– ※
SUS304
測定値
C Si Mn P S Ni9 Cr20 Fe71

※SUS304のFeは測定された元素の量を100%から差引いた量と考える

代表的なステンレスであるSUS-304をSEM/EDXで観察と元素分析した結果です。
SUS304の成分規格はクロム18~20%、ニッケル8~10.5%、鉄 残分(クロムやニッケルその他の成分の合計を100%から差引いた割合でおよそ約70%)とほぼ一致していることからSUS304であると考えられました。
次に10円硬貨の元素分析を行いました。
銅と錫が検出されていることから青銅であることが確認できました。

10円硬貨25倍SEM像
10円硬貨EDXチャート
10円硬貨の品位と実測値
(単位:%)
Cu Zn Sn
10円硬貨の品位 Cu95 Zn3~4 Sn1~2
10円硬貨実測値 Cu96 Zn3 Sn1

また10円硬貨の品位は銅95%、亜鉛3~4%、錫1~2%であると言われておりEDXによる分析結果もそれと良く近似した数値が得られました。
金属の定性分析にはEDX検出器を使用した元素分析を行うことにより、試料がどの様な金属であるのかを推定することが可能となります。

SEM/EDXによる元素分析の場合には数μmの試料まで元素分析を行うことが出来るため、微細な異物の定性分析には有効な手段となります。
またEDXによる元素分析はファンダメタルパラメーター法が主になるため、厳密な検量線を使用した定量とは異なります。
精密な定量分析をご希望の場合にはICP-OESなどによる定量分析をご依頼下さい。

これまで紹介してきました無機試料の分析ですが、一部の生態試料についても微細な構造の観察を行なうことが可能となります。
以下にカビ(真菌)の分生子柄と胞子の画像を示します。

SEM像 かびの分生子柄と胞子5000倍
SEM像 かびの胞子5000倍

観察と元素分析

測定したい物質が有機物(例えば樹脂や紙、油など)の場合にその物質がどの様な物と似ているかを調べることでトラブルの原因調査の手助けになります。
例えば「シジミの味噌汁の中シジミと似た形をした石が入っていたとか、サラダの中に芋虫が入っていたとか。」これは原因の追究は簡単に行えそうです。
シジミの味噌汁の小石はシジミの選別のときにシジミと形状が似ていたために選別機が取り除けなかったか、人手の選別であれば形がシジミと似ていたから取り除けなかったと想像がつきます。
またサラダの芋虫は恐らく原料の野菜にまぎれて最終製品のサラダに入ったと容易に想像がつきます。(だからといって納得して良いかは別問題ですが)
ではお菓子を食べていたら透明なプラスチックの破片が出てきました・・・これはどうでしょう?
この場合はこれだけの情報で原因を推定するのは困難です。
先ずは色や形、模様などの観察で原因が特定できる場合もありますが、それだけではなかなか原因の特定は出来ません。
樹脂と言っても沢山の種類がありますので異物の樹脂がどの様な種類の樹脂であるかを知ることが出来れば原因の究明に近づくことが出来るかもしれません。
そこでFT-IRで樹脂の材質を調べます。
5mm程度の大きさが有ればサンプルを装置に押し付けて赤外吸収スペクトルを測定します。(ATR測定)
赤外吸収スペクトルは樹脂ごとに特異なスペクトルが得られるため赤外吸収スペクトルを測定することによってその樹脂がどの様な樹脂なのか判断を行なうことが出来ます。

ポリエチレン
ポリプロピレン
ABS

ポリエチレンは通常ビニール袋などの包装材料に良く使用される樹脂であるため、ポリエチレンが検出された場合には包装材などの混入を疑います。
次にポリプロピレンはポリ容器などに使用される樹脂であるため、製造工程で使用されているポリバケツやタッパーなどの混入を疑うことになります。
ABSは家電などの外装や筺体などの機構部品として使用されることが多い樹脂であることから生産設備の機構部品の脱落による混入を疑うことになります。
この様に樹脂の用途と材質の関係から混入ルートを推定することが出来ます。

サンプルの大きさが1mm程度まではATR法で測定できますが、それ以下になりますとサンプルをダイヤモンドセルで押しつぶして赤外線を透過させてスペクトルを測定します。
サンプルの大きさの限界は赤外線の測定波長によります。FT-IRの長波長側の400cm-1は波長25μmに相当することから、サンプルの大きさは最低でも20~30μmは無いと測定波長よりもサンプルが小さくなってしまい適切な測定が出来なくなってしまいます。
またサンプルの大きさとして50μm程度(髪の毛の半分の太さ)まではサンプリングが行えますが、それ以下になるとサンプリングが困難になり測定器にセットが困難となってきます。
異物は一般的に大きさが小さくなる傾向にあるので、サンプルをご送付いただく場合に注意が必要になります。
異物そのものをテープなどに貼り付けて送付頂く場合がありますが、テープの粘着成分がサンプルに付着し、最悪の場合正しい測定結果が得られなくなることがあります。
サンプルは弊社でサンプリングを行いますので、異物を基材ごと小さなタッパーのようなケースに入れて固定して頂く事が出来るとその後の分析にあまり支障が無いと考えられます。

お送りいただく場合の例