RoHS分析

RoHS指令/RoHS分析

1.RoHS指令について

RoHS指令は、電気電子機器における特定有害物質の使用を制限する欧州連合(EU)の法律です。電気電子機器が廃棄される際に、人体や環境への有害な影響を最小限に抑えることを目的としています。
特定有害物質として2006年7月の施行当初は、6物質が指定されていました。その後2019年7月に公布された改正指令(RoHS2)で、フタル酸エステル類4物質が追加され、現在計10物質が規制対象となっています。ただし代替手段がない場合など特定の用途では、適用除外が認められることがあります。
規制の対象製品は、定格電圧が交流1000V以下・直流1500V以下の電気電子機器で、現在11のカテゴリーに分類されています。
RoHS指令はEU域内の規制ですが、日本で製造された製品をEUへ輸出する場合、この規制が適用されます。そのため生産者は、製品や部材の特定有害物質の含有量を把握して、規制値内であることを証明する必要があります。
当社ではこの分野の分析において、ISO/IEC17025の試験所認定を取得しており、国際規格に基づいたRoHS分析をおこなっております。

RoHS指令について画像 RoHS指令について画像

2.規制物質と最大許容濃度

No. 対象物質 最大許容濃度(閾値)[mg/kg]
1 カドミウム (Cd) 100
2 鉛 (Pb) 1,000
3 水銀 (Hg) 1,000
4 六価クロム (Cr6+) 1,000
5 ポリ臭化ビフェニル (PBBs) 1,000
6 ポリ臭化ジフェニルエーテル (PBDEs) 1,000
7 フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) 1,000
8 フタル酸ブチルベンジル(BBP) 1,000
9 フタル酸ジブチル(DBP) 1,000
10 フタル酸ジイソブチル(DIBP) 1,000

3.規制対象製品のカテゴリー

No. カテゴリー名
1 大型家電製品
2 小型家電製品
3 ITおよび通信機器
4 民生用機器
5 照明機器
6 電動工具(大型据付式産業用機械を除く)
7 玩具・レジャーおよびスポーツ機器
8 医療用機器
9 産業用を含む監視および制御機器
10 自動販売機
11 上記のカテゴリーに適用されないその他の電気電子機器

4.RoHS指令の動向

年代 実施内容
2006/7/1 RoHS指令の施行(RoHS1)、制限物質6物質、カテゴリ1~7、10が対象
2011/7/1 (RoHS2)の公布【2011/65/EU】、カテゴリ8、9の一部追加
2013/1/3 (RoHS1)廃止、(RoHS2)施行、CEマーク貼付開始
2015/6/4 (RoHS2)改正で制限物質10物質に拡大【2015/863/EU】公布
2019/7/22 追加4物質の含有制限適用、カテゴリ1~10以外の電気電子機器に規制開始

5.試験所認定(ISO/IEC17025)とは

ISO/IEC17025は、試験所が妥当な結果を提出する能力を有することを国際的に保証するための国際規格です。分析結果に対する国際的な相互承認を推進する為に導入されました。試験所の試験報告書は、認定を受けた範囲で相互承認に基づき世界に通用します。
品質マネジメントシステムISO9001は、業界を問わずあらゆる組織を対象とした品質保証の規格であるのに対し、ISO/IEC17025は、試験所が正確かつ妥当に行う技術能力を持っていることを国際的に証明するための規格です。ISO9001の要求事項に加え、特定の試験方法とそれに伴う技術的要求事項(試験設備、測定の不確かさ、技術者の力量など)も認定の対象となります。
当社では、2005年7月より公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB)による審査を受けており、有害物質の分析分野においてRoHS10物質全項目の認定を取得しております。

6.当社のRoHS分析の特徴

  • ❶緊急時の短納期対応可能:

    国内ラボで分析を行っているため、検体受領後最短翌日の結果報告も可能な体制です。

  • ❷難分解性物質の対応:

    セラミックなど分解が難しい物質についても常時分析を行っており、完全溶解して分析可能です。

  • ❸その他有害物質も同時対応:

    RoHS分析項目のほかにREACHや海外の個別規制など他の有害物質分析も合わせて分析可能です。

  • ❹メッキ被膜部の分析対応:

    多種多様な製品の分析を実施しており、メッキを施された製品からメッキ部のみを剥離し分析することが可能です。

7.分析項目の規格と当社試験内容

区分 分析項目 分析規格名 分析方法 定量下限値
[mg/kg]
RoHS10物質
(精密分析)
カドミウム(Cd IEC62321-5 マイクロウェーブ分解-ICP-OES/MS 2
鉛(Pb) 2
総クロム(Cr) 2
水銀(Hg) IEC62321-4 0.5
六価クロム(CrⅥ) IEC62321-7-1
(金属試料)
沸騰水抽出-ジフェニルカルバジド吸光光度法 《重量換算》
2
《表面積換算》
0.01[μg/㎠]
IEC62321-7-2
(ABS,PC,PVC及びアンチモン非含有の非金属試料)
超音波抽出/マイクロウェーブ分解-ジフェニルカルバジド吸光光度法 8
IEC62321:2008 Annex C
(ABS,PC,PVC以外でアンチモン含有の非金属試料)
アルカリ抽出-ジフェニルカルバジド吸光光度法 2
ポリ臭化ビフェニル(PBBs) IEC62321-6 溶媒抽出-GC/MS法 5
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) IEC62321-8 溶媒抽出-GC/MS法 30
フタル酸ブチルベンジル(BBP)
フタル酸ジブチル(DBP)
フタル酸ジイソブチル(DIBP)
その他関連物質
(精密分析)
臭素(Br),塩素(Cl)
フッ素(F),ヨウ素(I)
IEC62321-3-2
BS EN 14582
燃焼-イオンクロマトグラフ法 50
ヨウ素 100
アンチモン(Sb),ヒ素(As)
ベリリウム(Be),リン(P)
IEC62321-5 マイクロウェーブ分解-ICP-OES/MS 2~25
フタル酸ジオクチル(DNOP)
フタル酸ジイソノニル(DINP)
フタル酸ジイソデシル(DIDP)
IEC62321-8 溶媒抽出-GC/MS法 50
RoHS6物質対応
(簡易分析)
Cd, Pb,Hg, Cr, Br IEC62321-3-1 蛍光X線分析によるスクリーニング法 樹脂 20
金属 50

8.蛍光X線分析装置による簡易分析

蛍光X線分析装置(XRF)による含有量分析のご案内

・蛍光X線分析装置EA1400によるRoHS規制6物質の簡易測定を行っております。

・分析は鉛・カドミウム・クロム・水銀・臭素の5元素を測定致します。

・6価クロムはクロムとして、PBB,PBDEは臭素として評価いたします。

・各元素が基準値に近い値で検出された場合、精密分析による確認をお勧めいたします。

・緊急の場合は、ワンデーサービスでの結果報告も行ないます。

・サンプル形状は樹脂や金属を初めとする固体の分析はもちろん、粉体やペースト、液体まで非破壊の分析に対応します。

W304mm×D304mm×H110mmの大型試料室で大きなサンプルもそのまま測定することが出来ます。

こんな分析にも活用できます

輸入品からの有害物質の含有が問題になっている昨今、私たちの周囲にあるおもちゃや生活雑貨など多種多様な製品のスクリーニング分析にも対応致します。

※注)蛍光X線分析は簡易分析です。正確な含有量の測定は、別途精密分析が必要となります。

9.報告書の書式例

当社の報告書は分析結果の偽造防止ため、電子署名とタイムスタンプを付与したPDF版の電子報告書で発行します。また日本語・英語を併記しているため海外でもそのまま利用可能です。

報告書

試験報告書

分析フローチャート

分析フローチャート

10.対象物質の分析フロー

電子部品・一般材料(無機元素)

カドミウム・鉛・水銀・全クロム測定

六価クロム測定

めっき皮膜の分析Cd,Pb,T-Cr,Hg)

めっき皮膜の分析(六価クロム)

電子部品・一般材料
(PBBs/PBDEs、フタル酸エステル類4種)